都市経営の拡張

September 24th, 2022

まち界隈 (?) の、だいぶニッチなうんちくメモ。

こないだ沼津であったリノベーションまちづくりサミットは、議論のテーマも進化してたり若い世代も入ってて、時代のシフトを感じ取れる面白いものだったようで、行けなくて残念だった。

リノまち界隈?ではしばらく前から都市戦略とか都市経営みたいな話が出るようになって、先日もそういう話がなされたようだが、僕はずっとそのへんの言葉にモヤモヤしてきた。都市経営とかっていう言葉は当然ながら曖昧な言葉で、企業と違って主体が誰なのかもわかりにくい。各論のジャンルはめちゃくちゃ多岐にわたる。だがまあ普通に考えると都市や地域の経営をする責任者は自治体で、すなわち都市経営の指標は自治体財政で、それがよくなれば地域の諸々がよくなる、というのが一番単純な捉え方なのだろう。経営という以上は経済的な話がベースになり、ボトムアップのまちづくり的なことや公民連携事業的なこともそこに寄与し、それがうまく回っていけば暮らしもハッピーになるよね、という話。

そして自治体財政とか地域経済や産業戦略みたいなマクロ寄りっぽい話と、ボトムアップ、草の根寄りのリノまちは間違いなくつながっているはずだが、どうもそのクロスの仕方が見えにくいというか、コミュニティも別というか、双方(といってもシームレスでグラデーションではるんだが)が相手側を語るといまいちリアリティに欠けちゃうみたいなところがある。マクロな人がミクロな話を語ってもソソらない感じになったり、ミクロなアクションやデザインをする人がマクロを語ってもなかなか全体感が出にくい、などなど。

ところでいわゆる「まちづくり」というのは解釈自由で何でもありな言葉なので、安心も利便も快楽も、福祉も教育も景観も居場所論も経済論もなりわい論も含め、あらゆる人たちが部分的でも全体的でも個人的でも社会的でもいいからなんか前向きなことできるよね、というものだと考える。

それを一歩引いて考えると「地域のビジネスモデル」と「地域の魅力づくり」という、経済とそれ以外みたいな二つの大きな話があって、それが両輪で相互にポジティブな影響を与えうる、という図式で捉えられる。
だが実際には建築界隈からのまちづくり、ソーシャル界隈の地域起業、コミュニティ界隈の活動などはbig push的な産業戦略論や都市経済論とはやっぱり距離はある世界なのかもしれない、と思うような場面も多い気はする。

リノまちは局所的な場所・エリアの魅力や価値の創造であり、同時にその行動主体となる市民個人たちのマインドセットを変えて自分ごと化することを通して幸せが増幅するよね、ということである(&その波及、みたいな?)。それは一般的な意味での自治体単位での経営の話のちょっと外側にある。アプローチはむしろ逆といってもいい。そしてそれは基本的には「魅力づくり」と個人の足元幸福論の領域がメインで、地域のビジネスモデル論としては往々にして部分的なものかもしれない。

ただ同時にそれは「(市民が・個人が・小さな民間が)自分たちで、都市地域を、その安心・利便・快楽・ミニ経済など含めた幸福を、つくり出しマネジメントしていくということ」であり、それって広義の都市経営・地域経営よね、ということができる。そして公民連携というのは、それが行政的な都市経営とクロスするところである。

つまりリノまち的なものは、「都市経営の定義の拡大or変更or創造をしようとしている」と言えるかもしれない。都市経営を「地域のマネジメント」と言い換えれば少しわかりやすい。明らかに「地域のマネジメント」をしようとするものであるし、その集積が都市マネジメント、都市経営となる。だから、大文字の都市経営・都市戦略の話の土俵に入ってこうというノリである必要は全くなくて、「こっちも含めて都市地域のマネジメントを捉えていきましょうや」という話なのだろう。

ただここで大事なのはマインドセット、考え方捉え方である。行政というより世の中が「そういうもんだよね」と思うようになることは、これからの時代には望ましい。そうするとマクロとミクロをつなげて考えることができていき、本来そうあるべしな世界に近づくのだと。

ところで都市経済・地域経済論といわれる界隈でも、九州半導体クラスターみたいな先端工場誘致っぽい産業戦略論から、エネルギー軸での地域経済の自立循環論など、大小様々ある。前者は20世紀的なパラダイムを引きずりつつやっぱり現実にインパクトがでかい(アマゾン本社誘致とか大学誘致とかも)。一方で後者はマインドセット的に未来っぽい方向を向くやつである。それはもうちょい掘り下げると、進化しすぎた資本主義型の回し方・事業形態から、その一部を欧州などで広がるような共同組合的なあり方へ向かうものかもしれない。





© 2018 ATSUMI HAYASHI BLOG |
快楽サステナブル Design by The Up!
PAGE TOP