最近の話

December 4th, 2018

最近、都市うんぬんについて話をする機会が増えているのだが、そもそもこれからの都市とか言っても広すぎて、何について語るべきなのよくわからない。テクノロジーの話もあれば地域持続性の話もあるし、公共空間の話、リノベーションまちづくり・・とど巷ではそれぞれ盛り上がっていて、それぞれの話でも山ほど議論があるので、むしろ、何があまり話されてなくてもっと考えなきゃいけないのかを見出すことも必要かもねと思い、こんな図を書いて話したりした。

 

左上からいくと、テクノロジーは利便と自由な時間を生み出し、人々の幸せな都市生活に寄与する。同時にテクノロジーは効率を上げて生産性を上げ、経済・財政に寄与し、それにより福祉や治安や文化の維持が可能になり、それは人々をハッピーにする。

右下から言えば、空間やアメニティをうまくつくることでコミュニティの健全な維持に寄与し、同時に福祉や安心をうまく解くこともできる。
そして魅力的な空間やアメニティがあることは、人材や産業を引きつけることにつながる。産業があって地域の財政や経済が回るし、雇用があるから人々はそこに住み続けることができるし生きたい場所で生きられる。

コミュニティデザインとか都市経済学とかパブリックデザインとか、様々なテーマや切り口があるが、この図の中のこのあたりだね、というのを見てみると確かにその居場所はある(部分解といえば部分解であることもわかる)。

また、テクノロジーが変わるときに都市の空間やアメニティの計画・デザインはそれをどう受け止めて先回りしていくかについても”業界”は十分に意識できていないのではないかとか、総じて都市計画とかまちづくりといった分野はアカデミーにせよクリエイターにせよテックと経済に近いところをきちんとできていないように思えるが、これは無責任と言われるべきことかもしれない。というあたりが「?!」のマーク。

ここでは幸せというのをゴール設定のように表現しているが果たしてそれでいいのか。例えば「持続」ではないのか?と。持続可能性というのが目指すべきものだとするとそれはもちろん「財政が破綻しないこと」とイコールではなく、皆が安心して生きがいや誇りを持って、できれば楽しく暮らせる状態の持続であり、ここではそれを幸せと言っている。

このフレームは考えるべきテーマを直接書いていなくて、あくまで領域とか切り口を混ぜこぜのまま、それらの相関関係をそれっぽく図にしたものでしかない。そしてこの「How」レイヤーの図をサンドイッチするように、下敷きとしては政治システムや行政システム、市場のルールなどの社会システムのレイヤーが前提となっていて、一方でこの上にはそれぞれの都市がどういう都市を目指すのかというアイデンティティやビジョンといった「What」のレイヤーがある。

と、こんなことを話すと「それで?」と言われるかもしれない。そんな相関関係をふむふむと眺めて意識したところで仕方ないじゃないかと。おっしゃる通りで、問題はこれらがどう「うまく回るのか」「そのために何ができるか」である。

マクロ的に言えばそれは国単位や自治体単位のマネジメントにおけるビジョンや戦略を描くことである。各々の都市地域がどんな魅力や特徴を目指し、そのためにどこにどうフォーカスすることで全体をうまく回るように持っていくのかというholisticなアイディアとシナリオ。一方でミクロ的に言えば、素敵な店を始めることも、小さな社会的活動も、新しい事業や便利な仕組みやまっとうな個別政策の立案や実行も大いに意味があるし、家族を大事にする気持ちとかだってそうだろう。だがそれらはいずれもこの図には直接的に表現されていない。

しかしとりあえずは、都市うんぬんの話について少し視野を広げてみるのもよいのではないでしょうか?という話。そしていくつかの切り口に着目してみましょうと。

例えば”人材や産業”を意識するとはどういうことか。たとえば公共空間や公共施設ひとつつくるときにも関係してくる。地方ではよく起業促進とかいうけれど、それは実際なかなか大変で、コワーキングスペースをつくりましたといったところで正直たいして関係ない。人との出会いをつくるのは意味があるものの、別にそれは飲み屋イベントでもよく、コワーキングがなくても起業はできる。やるやつはやる、なのである。

むしろ現実的に考えると、既存の地場産業をアップデートして成長させることのインパクトが大きかったりもする。ほんとはあるタイミングで海外進出したり新たな技術を取り込めば地域の雇用が減ることはなかったよねみたいな話は結構ありうる。これまではそうした役割を担う人材が東京へ行って帰ってこなかった時代だった。しかし価値観は変わりつつあり、東京の大手やベンチャーなんかで鍛えた次世代の経営者やその予備軍をUターンさせて中枢に埋め込むことを考える必要もある。彼らやその家族にとって本当に魅力ある公共施設や公共空間があれば「おれは地元に帰って地元の再生に一役買いたいんだ!」という人の奥さんも「うん、あそこならいーかも♫」となるかもしれないわけで、そういう視点で計画することも大事なのではないか。とか。あるいはまた、それこそポートランドなんかでもインテルやナイキの本社があることで経済が潤い、それがカルチャーに流れて支えているみたいなこともふまえつつ、骨太産業をどう維持・創造するかの作戦を練らなければいけないということとか。

・・というような話を最近はする。加えて先月話したネタとしては・・

そもそも地方でしょうもない過大投資が行われたりやばい感じのタワー開発ばかり行われるのも、自治体の戦略性や想像力の問題以上に、国の制度設定の問題だったりもするよねという話。

ディベロッパーにやたら人がいて無駄にメガ開発に走るのも、上場して短期的な数字を出さないといけないからしょうがない。ほんとはデベなんてよほどの地主でもない限り上場させないべき業種じゃね?という話。ついでにいえば鉄道会社なんかも住民巻き込み的な形でMBOして非上場にした方がいいかもじゃない?みたいな話。

そうでなくても原丈史さんが言うように、長期の投資のみを受け入れる市場をつくればそこに上場すべき/したい会社はいるし、金融市場の国際的な差別化にもなるというのは賛成、という話。

企業誘致は依然として意味があるアクションだが、これまでのように税金のインセンティブと土地の紹介みたいなのでなく、新しい生活像や人生観を体現しているローカルヒーローたちを巻き込んでライフスタイルや人のアピールをしていったらどうかという話。

社会課題を解くための新しいルール設定を民間から提案し、提案した事業者が自らそれを事業にしてフロンティア利益を得るようなかたちは、社会の前進の一つの有効なアプローチではないか、ディベロッパーもそうした戦略的ロビイングをビジネスに組み込むべきではないか、という話。

福祉は消費促進の領域に代わってクリエイティブの主戦場の一つになるのでは、という話。などなど。

僕はこれまで、都市を空間的な面で面白く楽しくするべく何ができるかということにしか本質的に興味がなかったのでそういう目線でやってきたけど、それは都市の幸せとその持続においてほんの一部分の話ではある。で、少しテーマを広げようかという感じになってきたのは、地方に実際に行くと、それぞれの街がいいかたちで持続するために必要なことを考えたくなってきちゃったということである。

とはいえ「気持ちいい・楽しい・面白い」は本質的に人間を引きつけるものだし、それが巡り巡って色んな問題を解く力になっていくから、まあ基本路線はたぶん変わらないだろう。小さなワクワク話や面白事業と、マクロな一見カタめな話を行き来するスタイルを、もっとやんちゃかつオトナな感じでやっていこうと思っております。そんなわけで明日からドイツで色々見てきます。





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