地方と公共空間

October 22nd, 2017

この間、各地方都市のR不動産のコアメンバーが一同に集まる機会があり、今回は鎌倉が会場だった。鎌倉はこれまで「稲村ガ崎R不動産」という名前で運営されていたが、最近、面白法人カヤックが資本提携によりその運営会社のメインオーナーになって、サイト名も「鎌倉R不動産」に変わることになった。

1日目の夜に、公開イベントとしてカヤックの柳澤さんに話をしてもらった。話のテーマは「地域資本主義」というもので、その考え方を自らカヤック社として体現すべく、鎌倉資本主義というのを追求していくという。上場会社でありながら、時価総額最大化とは矛盾しそうにも聞こえるキーワードを掲げているわけだ。さすが面白法人。現在の資本主義システムを修正あるいはアップデートしていく上でのコンセプトといったところだが、その実体が具体的に何なのかは模索中とのこと。基本的な考え方として「地域資本の最大化を目指す」ということが企業や自治体の一つの共通のベクトルとなると。中央の資本主義システムのサブシステムとして、あるいはそれに影響を与えていくような、いろんな仕掛け、仕組みが生まれていくのだろう。資金やその他リソースを調達する市場、あるいは通貨とかも・・・実体がまだ見えてなくとも言葉として引っかかるものがある。

僕は最近、地方の都市経営への興味が以前より増している。都会を離れて自然体な暮らしをしている素敵な人たちの話ももちろん興味があるけれど、一方で地方都市や小地域が、これからどのような経済構造で生き残るのか、その現実的なシナリオに関心がある。都市単位、地域単位の経済持続がどういう形で可能なのか。

小さなコミュニティやコンテンツをつくる人が増えるのは確実に力になっていくが、同時に既存のある程度まとまった雇用が維持されることも重要だ。ポートランドなんかでも、インテルやナイキがいなくなってしまったら街場のクラフトマンたちの仕事も大きく減らざるを得ないわけで。

僕は公共施設の活用・再生といったことをドライブするための仕掛けとしての「公共R不動産」にも若干ながら関わりつつ、リノベーションスクールにも時々顔を出しつつ、仲間たちと一緒に、公共施設再編再生を切り口に自治体の中長期戦略につなげていくためのシンクタンク&コンサルティング会社(セミコロンという)を最近つくったりした。

公共空間は量的にも再編していく必要があるのは当然だが、中身も変わっていく必要がある。単に多目的な集会場やただ空地と遊具があるだけの公園や保育所・高齢者ケア・図書館といった機能をばらばらに提供をするだけでなく、本質的にコミュニティのコアになるような場所となるためのソフトとしての質や、それを担保する体制と有機的な運営形態や空間のアフォーダンスなどが求められる。

街の中心にそうしたコアな場所が魅力的な形でつくられるとしたときに、僕はそこに地元の有力な企業たちが同居または隣接するような場所のメージを持っている。地方の生産拠点は海外シフトをしたり、営業拠点たる支店が撤退したりして、あるいはまた小売の総量が減ったり東京本社の大企業に商売が置き換わったりする中で、それでもたくましく地方でしっかり続いている企業、ビジネスがある。その中には今後いつなくなってもおかしくない雇用があるのも事実だが、将来にわたっても持続性や競争力を持ちうる産業は存在する。

これからも地方にあってたくましく持続発展しうる産業は何かと考えていくと、一次産業やIT関連などもあるが、2次産業でも例えば食品加工業などは有力と思う。山形で言えば豆のでん六だったり、千葉ならヤマサ醤油だったり、長野ホクトや広島のオタフクソースといった全国的に名の知れた会社だけでなく、多くの中規模の個性的な会社たちもたくましく続いていけるところがたくさんある。工業系でも伝統的なものはもちろん、諏訪のエプソンや金沢のIOデータとかみたいにテクノロジー産業も経済における貴重な存在であったりする。もちろん新しい打ち手として自治体単位で戦略的な規制緩和をして中央の企業たちのR&Dを呼び込むとかも並走すればいい。

公共の○○プラザにベンチャーのインキュベーション拠点つくります!もいいんだけど(大抵の場合あんまりよくないが)、都市の持続発展に寄与するようなすごいスタートアップやその生態系を生むというのは場所をつくるとできていくような簡単なものであるわけは当然ないし、そういうヤツらは○○プラザとか関係ない。

上に挙げたような規模感のある会社が強くあり続け進化していくことは地域にとってかなり重要で、それらの企業たちもイノベーションは続けていかねばならず、地元の優れた人材とともに都会で鍛えたビジネス人材たちがUターンやIターンして加わることが必要だろう。

そこで、そうしたまとまった雇用を持つ事業体が、子育て環境や情報刺激もある魅力的な仕事空間を持つことで人材を引き寄せるような選択を公民が連携してつくっていく。地元でたくましく頑張って全国や海外にモノを届け利益を上げている会社は仕事場として充分にチャレンジングなものだ。今の時代、都会の意識高き若者たちが地方にいくのは農業やゲストハウスやルゴリゴリのソーシャル系だけが答えではない。

東京でしばらく働いたあとに地元に帰って、地元の有力企業をより有力で面白くたくましくかっこいい会社として発展に寄与していくキャリアは今後脚光を浴びる気がしているが、ともかくそうしたモチベーションを高めることは街のためにもなる。そこで街のコアとなる公共施設はこれまでのイメージの「公共施設」の枠を解き、もっと柔らかく発想すべきだ。コア企業の仕事場も、公園も保育も高齢者ケアもライブラリーも、あるいはもしかすると教育期間や日常的な物品流通も、その最適な共存や連携を考えて重ねて配置し運営する。もちろんその運営も投資も公民で手を組んでいく。
その上で、そもそも都市の持続発展の戦略・ビジョンの根幹において、公と民が一定のスケールで連携しシナジーを生むような発想を持つのがよい。その象徴として、魅力や生産性や発信や出会いのコアとしての求心力ある公共空間(群)をつくっていく。都市単位の公民連携という感じ。

ただしそうした場所が単に大きなビルと空地で、○○センターと○○オフィスが重なっているだけでは話にならない。そこにイマジネーションとクリエイティビティが必要になる。空間体験としても魅力的でなければならない。いかにも公共っぽいオフィシャル感よりも、日常感やB面性を重視する。そしてもちろんそこから旧市街ともうまくつながるようにすべきで、むしろ発想は街のリノベ。

そもそも再開発というのは何を開発するかというと、それはもはや土地と建物ではない。新しいビジネスの生態系を開発し、同時に新しいコミュニティ価値の提供形態を再開発しなければ意味がない。こういうところには建築家の出番もあるが、適切な与件設定がされる機会がなかなかない以上、モノの形を描く者としても、そもそもそこに何があるべきかについて現実的な解をつくる思考も必要になる。

こうして偉そうなウンチクをたれているだけでなく、自分ももっと現場に出て行くことにする。具体的なかたちを描きつくっていくのは全然これからだけど、ようやく自分なりの地方都市への切り口が少しずつ見えてきた気がしております。





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