新島にて
October 17th, 2016
この4日間、久しぶりに新島で過ごした。
初日から風邪気味でだるかったのに、船から島に下り立った瞬間にす〜っと体から何かが抜け出てスカっとした気持ちになって、あ、島に来たんだなと思った。未だに謎なこの現象。
しごとをつくる合宿というのをナカムラケンタが地元商工会とともに企画し、僕はメンターみたいな立場で参加した。総勢25人ほどのメンバーが3チームに分かれ、地域課題を解くための即興提案を二日半でつくるというもので、まあぶっちゃけ島の外から若者たちが訪れていきなり島の難題を解くなんてことができるわけがないんだけれど、それでも小さな町ではそういうことから何かが生まれて前進が起こるものだということは知っている。
参加者たちは数日のあいだ頭をフル回転させて議論したり地元の人の話を聞いたりプレゼンしたり飲んだり地元の人たちの素敵さに触れたりして、この場所に愛着を感じるようになって、それだけでもハッピーなことではあるけれど、この島で具体的なコトが進むという意味でもやっぱり前進は起こった。
一通りのプログラムが終わったあと、一息つきながら石渡君と話しているとき、今回みんなから出されたいくつかのアイディアと、参加者の若者と、最近島に戻ってきた一人の音楽家の女性と、2年前にやってきた飲み屋の大将と、そしてたまたまヒアリングを行った物件と、島の小さな会社と、僕らのシェア拠点と、それらを組み合わせることで動き出す一つのシナリオが浮かび上がったのだった。
何の細胞や作用が生み出すのかよくわからないけれど人の頭の中にアイディアというものが生まれる。それが人に伝達される。それに触発されて人にスイッチが入る。すると、何のどんな作用かわからないけど人は頭の中に自然エネルギーを生み出して、次なるアイディアやアクションを生み出す。そうしてスイッチの押された誰かと、少し進化したアイディアと、そして以前から近くに存在していた場所・空間といったものをつなぎあわせて編集してみると、面白く前進するコトの設計図が浮かび上がっていく。そんな瞬間の感覚はたまらない。
僕らは去年、宿+カフェ saroの営業を終えてから島の別の物件を仲間の6社で借りて、サテライト仕事場兼保養所のようなシェアセカンド拠点をつくった。ここを島の人たちもいろんな形で使える場所にしようと思っていたけれど、イメージ通りにコトが進むには何かのピースが足りていなかった。今回この場所で皆と飲み語りながらも、合宿の最中にこの場所を使ってどうこうということは全く考えていなかったのだけれど、振り返ってみるとその足りなかったピースが見えてきた。小さな一歩から大きな課題解決につながるストーリーの一部にこの場所も活かせる、と思えたことは自分にとっても収穫だった。自分はこの島であまりお金は儲けていないけど、相変わらず大きな学びと喜びをもらい続けている。
ところで今回、複数のチームに共通していたのは、公共施設と民間のソフト運営を重ね合わせる考え方だった。公共施設はただ公共施設としてつくられても機能しきれず、一方でソフト運営のためのハコであったり、ソフト運営における幅広い動員集客には公共性が意味を持ったりもする。人口の小さい地域ではきっとこの考え方は有効で、”上”の人たちともその意味をしっかり共有できたらと思う。
ところでもうひとつ嬉しかったのは、新島に新しい宿ができたこと。今までも色々お世話になっているクミさんが一念発起して古い物件をリノベしてできたHostel NABLA。この秋にオープンする予定だが、想像していた以上に魅力的な空間になっていた。これまでになかったいろんなことが起こっていく場所になるだろう。僕らのsaroに影響されてこれをやろうと思ったとクミさんに言われたのは本当に嬉しかった。