ゆたか

February 24th, 2013

目黒と恵比寿の間に「ゆたか」っていう店がありまして、別に大してうまいわけじゃないのですがたまにいくわけです。さほどうまくもないのに食べに行くっていう感性、どうなの?とか言われそうですが、まあ理由がないわけでもありません。

このあたりで夜に一人でいわゆる定食的なものを気楽に食べたいと思ったときに、近頃はそれがあまりないのです。例えばナス味噌炒め定食850円。こういういわゆる定食屋がないわけです。

おばちゃんというかおばあちゃんというか、そういう意味では妙齢な女性に注文をすると、はいよっと腰をあげて台所に行き「トントントン」と茄子を切る。この音がとてもよいのです。テレビの音と、なぜかプロレスのポスターと、トントントンの組み合わせ。まるでおばちゃんは息子につくるような気分なんじゃないかとか、そういう感覚になるわけです(多分いちいちそんなこと考えずに作業してるんだけど)。

そういえば白金商店街の脇にあった僕らの最初のオフィス(というか7坪の倉庫)の近くには洋食ハチローというのがあって、近所に工房のある友人のひょうどうひでと(アクリルのデザイン職人)が週刊ポストとか読んでるみたいな感じが、その前は日比谷や汐留で働いてたこともあって、当時けっこう気に入っていました。それはどうでもいいとして・・

ゆたかのおばちゃんもきっと何十年も同じことをしているから、周りの飲食店のレベルが上がってまったくもって取り残されているのは事実でしょう。客も多分減ってます。地方にはこういう店はいくらでもあるし、いつも行ってると別になんでもないわけなんだけど、都心に住んで、外さない店に行こうとついグルメな友達のお勧め店に行ったり、食べログとか確認したりして生きていると、なんでもない定食屋に行くということには別の意味があるわけですね。

大戸屋のメニューもよくできてるんですけどね。ラミネート感がちょっと・・定食屋というものの基本的な価値を損ねる面があるんですよね。建物も一緒で、完璧な数奇屋も、建築家の超創造的な空間も好きだけど、家に求められるものはわりと、あえて魅せたり考えさせたりしない「ほっとする」というやつがあると思います。

思いのこもった個人の新しい店づくりでも、あるいはチェーン店でも「トントントン」な感じとか、それに通じる価値、つまり、ほっとする、というやつを、感動とどう融合するかが、自分にとっても進化のヒントの一つなのかもしれないなどと思って昨日もゆたかを出てきました。





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