答えは間にある

April 18th, 2012

要は多様性のデザイン、バランスの設計だと思うんですよね、という話。

最近よく”脱成長”的な話を目にするが、感覚的には共感を感じるものの、
じゃあ脱してどういうことになるのかという話は曖昧なことが多い気がしている。
なんとなく気分的に、ほっこり主義的な話で終わったりする。
「こういう考え方があると思うんだ」「もっとこっちに行こうよ!」という話はよくあるけど、
どういう全体観やバランスであるべきか、という話は少ない気がする。

基本的には、真っ当な形での経済成長のエンジンがあって、それと同時に、
新しい価値観や、アブナい形での成長に対するアンチテーゼが育って、共存していくのがいい。
で、それらがどのような関係や構造にあるのか、どういう多様性やバランスの全体像に
持っていくのが一番いいのか、そのためにどうしていくのがいいのか、
という客観的な話がもっと必要だという気がする。
「がんばって成長しないとこれから所得レベルが下がっていっちゃうけど、
それでも幸せになれるよね、所得と幸せって関係ないよね」的な話はもちろん一理ある。
自分も所得と幸せが比例しないことなんてめちゃくちゃ実感しながら生きてきた。

一方で、けっこうキッツいことになるよなぁという気もする。失業も犯罪も増えるのはいやだし、会社が次々中国に買われて中国人にいじめられたりしたら、つらいし。僕はあまり貧しい地域や時代を見ていないから、かつて東北の農家が貧しくて娘を500円で売ったりしてた的な話はリアリティがないし、みんなそこまで想像していないけど、とにかく貧しくなるのはきついに違いない。
現状はまだまだ古い価値観が新たな時代に合う形にシフトしていく途中だから、”脱成長”的マインドやメッセージが力を持つのはよいことだと思うが、デキるやつがみんな社会起業家!を標榜する感じになるとさすがにバランス悪いだろうし。
スローで素敵なマインドで、それでお金なくても存分に楽しめる人、あるいはそうした価値観なり考え方をメッセージングすることで結局自分は稼げちゃって困らない一部の人はいいけれど、みんなでそっちに行っちゃうと結構マズい。多くの奥さんが、困る。

僕は規模拡大やメジャー化自体を仕事での目標と目的にしていないから、肉食事業家から見ればだいぶほっこり系に見えるだろうけれど、実は「ほっこり系の素敵なたひとたち」への懸念を持っている。
ほっこり系の方が感性が豊かな場合が多いから、メッセージの表現力や強度はあるが、全体観的視点が弱かったりする。価値観や社会像は豊かで素晴らしいものを持っているのに、それを実現する現実的な手立てやバランスについて詰める技術に欠けている場合が多い。そこが勿体ない。いまいちビジョンに欠けるゴリゴリビジネスな人の方が意外とバランス感はあったりして、それが保守的な方向へ導く力を持ってしまったり。

正しいマイノリティが、マイノリティであるゆえに敗退し、全体最適・長期最適がなされなくなるのは悲しい。
だから、メッセージングにとどまらず、全体視点やバランス視点からも物事を解いていくための現実的なトレーニングを積むべきではないか、と。

世の中の、というか日本の多くの議論は、右か、左か、で主張しあうか、はたまた何となく同調しておくか、そのどちらかであることが多いなと思う。それぞれの異なる切り口や意見があって、お互いいい部分を認めながら一緒に具体的にすりあわせていく議論が下手だと思う。

答えはだいたい”間”にあるものだと思っている。100%いい人とか、100%悪いひとなんてあまりいなくて、だいたい誰しも素敵なとこと邪悪なとこが両方あるものだし。客観性というのは大事なもので、それが欠けると刹那的な感情が世の中の制度を決めてしまうような危ない状況につながる。

いずれにせよ、幸せ(価値観)の多様性と、その健全なバランスが保たれていて、そこに選択の自由が確保されていること、それが豊かさなはずで。その多様性とかバランスがどういう状態だとよいのかを考えて、実際に少しでもよりよい状態に近づけることが自分の仕事なんだと数年前に思うようになってから、だいぶすっきりした気がする。分析好きだねぇとか言われるけど、自分はそれでいいと割り切ることにした。





  1. 読みました。流石に正確に分析していますね。だけど、表現は飛ばしているね。
    私は、このバランスについては個人でバランスをとるのではなく、その人の周囲の人間達全体でバランスがとれればそれでいいと思っています。個人の志向も時間で変化するものですから本来であれば、自分が(10,8)の方向に行けば、だれかが(-10,-8)の方向にシフトする、というのが理想的だけど、そんなことは難しい。であれば、自分はそもそも、(10,8)にいることにしておくよ、という自身のキャラクターを設定して、しばらくはそこにいることにしておく、ことが現実的ではないかと思う。だから同じバランスでも全く志向の違う個人達が全体でバランスをとる、ハイブリッドの形。
    その際には、個人の志向を理解しあう、個人のキャラクターを把握しあうことが必要です。もちろん自分の志向を知ることが最優先ですが。
    きっと、私はほっこり系でしょう。だから、自身を最適化してくれる環境を日々探して、パートナーを見つける必要があるのでしょう。
    林さんはほっこり系とおっしゃるが、私との合成ベクトルはちょっと最適化する方向にあると思うよ。
    そもそもベクトルを持たない、限りなく(0,0)にいる人達は誰にも影響しない。それはそれで、最適だけど、どうかと思う。少なくとも私の周りには必要ではない。どう?

    April 19th, 2012 尾谷憲一
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