20170420

April 20th, 2017

こないだの週末、リノベサミットで即興ユニットワークをやったのだが、そこでの題材は築地市場だった。市場機能を残すことは必ずしもありきではないという前提で、築地市場をリノベするとしたらどうする?というお題をもとに、現場ヒアリングを経て数時間でプレゼンをつくるというものだった。以下はそれを通して思ったこと。もちろん全てはDay1仮説のレベルなので、異論や突っ込みはもちろん歓迎ということで。

僕らのチームとしては、市場機能は基本的に豊洲に移転した上で、築地には今の市場とは異なる新しいかたちの場(マーケット)をつくり、さらに開発を加えるものになった。建物は部分的に既存活用もするし今のゾーニングも多少踏襲するが、多くは建て替える前提である。

築地と豊洲の問題については、土壌の安全と安心の話で騒がれているが、もともと僕自身は、安全問題はもうクリアしているとの認識で、これについては過去の意思決定や情報共有のあり方についての検証はしておくべきだろうね、という考えだった。この話については、経済目線寄りの人はもういいから移ってしまえと言い、逆寄りの人は感覚的に反対に回るという、まあいかにも的な感じになっている。今回は、運用収支がかなりの赤字で、ライフサイクルコストを考えるとかなりヤバいんじゃないかという話があるうえに、もしかしすると計算上は、築地をコストセーブしてつくり直して、豊洲はあらためてタワー複合開発でもすれば収支はその方がいいかもしれないといった話が出たりするもんだから、移転当然という人たちも「ん?そうなん・・?」みたいな雰囲気も若干出たりしているようだ。

だが今回、現場や関係者の話を短時間ながら聞いてわかったことは、むしろ問題とすべきはさらに別のところにあるということだった。東京の未来を考えたとき、市場はさくっと移転してOK、それでこの話は終わり、ということにするのはやっぱりちょっとよろしくなさそうだ、ということである。

まず一つの問題は、豊洲の配置やゾーニングの計画が相当イケてないということ。「まあ、そうかもしれないけどさ、移転やめるってレベルじゃねーだろ」というのが一般的な感覚なのだと思うけれど、僕の感想としては「移転の仕方」や「使い方」をもっと考えた方がよさそうだ、という感じであった。

今の築地は、言うまでもなくだいぶ老朽化しているし衛生的にも前時代的状況である。だが同時に、配置や流れはある意味よくできていて、なかなかに効率性が実現されているという話があって、これは現場で聞いていて確かに納得感があった。

築地では、長い時間でつくられてきた暗黙知のようなものが蓄積されており、秩序なき秩序というか、少なくとも今までのやり方の中で、車やモノの複雑な流れがうまく処理されるような状況ができている(だからといってそれが今後に向けてもベストだと言うわけではないが)。そしてその秩序や仕組みの中には、築地が世界から評価される「技、目利き」の力を生かすシステムが内包されているということがあるようだ。僕にはそのことをうまく説明できるだけの情報整理はできていないんだけれど。

豊洲はどうかというと、今の築地とは別の仕組みや形において、機能や価値が大きく前進していればいいんだけれども、売場は少ししか増えてない割に廊下がすごく増えていて各機能がフロアも含めて離れている等、買いに行く人にとっても売る人(=運んで積む人だったりする)にとってもデメリットがめちゃくちゃ多いらしいのである(これは特に移転反対派とかでないユーザーコメント)。そして築地に存在する高度な目利きと技が発揮されにくい状況になりそうだとの話だった。これはおそらく仲買が生き残りにくくなるとか、こだわりある小規模バイヤーにとって使いにくいとか、そうした部分の話だと思う。まあ要するに豊洲の建築計画上の与件設定がひどかったということなんだけれども、それは公共建築の世界ではまあよくある話だろう。だが少なくとも、深く広い視野をもった上でのデザイン思考はそこには見られず、機械的、積み上げ的に計画されたということのようだ。

豊洲に移ると仲買(仲卸)にとってはやりにくくなる要素が多く、下手をすると仲買というもの自体が消えていくかもしれないという話がある。ただこれについては、そもそも築地でもすでに仲買(仲卸)はどんどん減っていて、それは流通の変化の中での必然的な流れでもあるのだろう。大手スーパーなどのシェアがどんどん上がり、しかもそれらは市場を経由する必要すらなくなりつつある。市場で買うプレーヤーたちも、仲買を通さずに「卸(荷下ろし)」から直接バルクで買う流れが増えていると。築地に買いに来ている個人店たちの中でも、生産地から直接買うものも増えていると聞く。

これは何を意味するか。一つには、豊洲も必要面積が減っていきそうだということ。さらに言えば、リアルな空間としての市場というもの、一箇所に集まった食材市場というものの意味自体が徐々に失われていくということではないのかと思ったのだ。つまり、豊洲もやがて「余る」わけだ。ゆえに、償却前でも年数十億といわれる運営赤字ももっと下げられるということになる。いずれにせよ先々に向けた利用形態のシミュレーションもしておいた上での適切なる移転が必要ではないかと思えてくる。

中規模・大規模の流通にとっては築地よりも豊洲が望ましい面は多いのだろう。だがもしかするとやがて、大資本流通の企業たちの都合を考えると、豊洲を彼らが自社の物流センターとして賃借して使うような、つまり貸し倉庫業態に転用していくようなイメージが合理性を持つこともあるのかもしれない。

さて築地に話を戻すと、ここにある文化やブランドをどう引き継ぐかということは、経済戦略上も無視すべきではないはずである。築地のリノベーション案というのは必ずしも今の市場機能を全て築地に残すこととも限らない。リノベーションというのは、そこにあるもの(ハードとは限らない)を残しうまく活かして形をアップデートすることである。豊洲ではこの文化やブランドといったものを全て引き継ぎ進化させることは難しいだろう。全てを更新するというのは往々にしてそういうものだ。それをスクラップアンドビルドという。

こうした仮説を立てるなら、そのとき築地をどうするのか。僕らのチームがつくった案のラフな筋書きはこうだ。
築地は、質の高い、ある意味属人的な、こだわりのニッチ流通が残るとともに(それは今の流れ・やり方をただ絞るということではおそらく、ない)、食文化の創造や発信の場、エンターテイメントの空間となる。多くの物量は豊洲に行くから、ここを流れるモノたちは特別なモノたちである。もちろんここに生まれる流通は、今までの市場のシステムや機能・価値とは異なるものである。
大通りに接するあたりから現在中央にあるオープンスペースのあたりにかけてはモロッコのバザールのようなカオティックな空間がある。そこでは人々が食べる、買う、遊ぶ、発見する、といった様々な体験がある。(このへんは詰められてないけど)。

そしてキモになるのは、敷地の中央地下にひっそりとつくられる、サンクチュアリ(聖域)と呼ばれる空間。そこは究極のラボであり、世界的価値を持つ技や目利きが存在し、そこで最高のブツが加工されたり出されていく場所。限られた人しかアクセスできず、普通はここを見ることはできない。そういう神の領域のような場所。
そして流通フロアの上部は大きな広場であり、わずかに残された古い構造や建物も見え隠れしている。そして川に近い今の卸ゾーンのあたりは尾根のようにむくれ上がり、中高層のボリュームとする。その中は住居も宿泊も職人のアトリエ的な空間や学びの場も、キッチハイク的な体験など、いろんな場所が混在する不思議な九龍城のような空間群にする。この部分の開発は、空中権売却との組み合わせで収支の帳尻をつけるための戦略要素でもある。(注:空中権売却は他チームの案からここでパクって入れたもの)

そうしてここに、築地の目利き・技、ブランドを一層研ぎ澄ませて価値を生み発信していく拠点、人の心と五感を刺激する文化的エンターテイメントをつくる。場所の価値がトガり続けるために、ここでは様々な法規的な特例がつくられ、特殊な社会圏、自由自治区ができていく。志高き個人店も、腕利きの職人たちも、それぞれの意味を持ってここに集まる。モノも人も、世界から集まり、築地の粋を研ぎ澄ませた、世界が見たい日本の食の象徴空間を創り出す。

・・とまあ、言うは易しなイメージシナリオをだだっとつくって語ってみたわけだけれど、もちろんこれをやるのが東京としてベストです、と言えるような検証をしたわけでは全くない。そして当然出てくるのは「で、どうすんねん」という話である。

簡単に言えばこういうことだろう。まず、豊洲の使い方について、最適化シミュレーションをする。ライフサイクルコストをはじく。あくまで客観的に、それも流通の今後変化を織り込みながら。一方で、築地に全ての機能を残していくシナリオも、比較案としてつくっておく。そのときの豊洲の活かし方と、全体としての経済分析をしておく。そして、上記で語ったような第三のシナリオを、想像力を持って戦略的に詰めてみる。現実可能な法規変更も含めて検討し、長期的な経済シミュレーションにも落とし込む。それらを一定の精度の範囲でふまえた上で、あるべき道を決める。といった感じ。

いずれにせよ、これから流通は今までと形を変え、二極化的な方向に進んでいくだろう。この先必要となる市場とはいったい何なのか。本来そこまで考えて解がある。ネットも宅配便もなかった時代、今のような大資本流通もなかった時代には、こういうリアルスペースが必要だった。かつて生活のために必要なモノを人々が買うのもこういうリアルなマーケットだった。もちろん、今の時点でも現実的でそこそこ最適な解が豊洲だと考えている人もいるだろうし、もしかしたらそれはある程度は正しいのかも、しれない。ある程度は・・・

そもそも土壌問題が出てこなければ、さくっと豊洲に移転するだけだった。それでも世間的にはまあ大した問題も起こらず、面白くはないけどそういうもんだよね、というよくある話だっただろう。そしてやがて色々と悩ましい事態はでてくるけれど、それなりに対処していく。そして「築地」は消える。そのエッセンスは他のどこかで何らかの形で引き継がれていくと思っておこう、といった具合である。

結論がどうなるにせよ、僕は今回のユニットワークを通じて、このままただスクラップアンドビルドを進めることに抵抗を感じるようになった。東京都の中で行われている築地リノベ案についても「そんなこと今やってどうすんの?」といった、ただ冷めた目線で見るべきではないように思えた。オロオロしている間に生じる損失をどうするんだ、という話もあるだろうけれど、他の「見えざる損失」よりもその期間のロスの方が大きいと証明することも、一方で誰にもできていないのではないか、とも思えた。

市場のことをよくわかっている人たちからすればツッコミどころばかりの話かもしれないが、自分にとっては都市のアップデートに関する学びを少なからず得たのは確かだった。これについてはこのあと、嶋田洋平のリードで何らかのアクションをとることになっている。

ちなみにユニットワークは3チームでやったのだけど、ウチの宮部らのチームに負けてしまい、賞品の韓国旅行は逃してしまったのだった・・うぅ。





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